図面を広げてスケールで測る代わりに、BIM モデルから直接「壁の面積」「コンクリートの体積」「建具の数」を取り出す——これが **QTO(Quantity Take-off、数量拾い)**です。IFC はこの数量を運べます。ただ、数量が入っていなかったり、net と gross を取り違えたりと、つまずきどころも決まっています。基本を押さえれば、モデルを積算の入口としてうまく使えます。
- IFC は要素ごとに長さ・面積・体積・数・重量などの数量を持てる(IfcElementQuantity / 標準の BaseQuantities)。
- モデル由来の数量は積算の入力であって、積算そのもの(単価・歩掛・ロス)ではない。
- 数量が空/おかしいときは、書き出しで含めていないか、net/gross・開口控除の定義違いを疑う。
QTO とは(モデルから数量を拾う)
QTO は、設計・施工に必要な数量を数え上げる作業です。従来は図面から手作業で拾っていましたが、BIM では要素そのものが寸法や体積の情報を持つため、モデルから数量を集計できます。壁が 100 枚あれば、その総面積・総体積をモデルが教えてくれる、というわけです。
手拾いに比べた利点は明確です。変更に追従する(壁を伸ばせば数量も変わる)、取りこぼしにくい(要素単位で漏れなく数える)、根拠が要素に紐づく(どの要素の数量かが辿れる)。一方で、後述するように「モデルの数量=そのまま積算」ではない点に注意が要ります。
IFC はどう数量を持つか
IFC では、要素に IfcElementQuantity(数量の集まり)を関連付け、その中に個々の数量を入れます。数量には型があります。
📏 長さ
壁の長さ、梁の長さなど(IfcQuantityLength)。
🟦 面積
壁の側面積、床面積など(IfcQuantityArea)。net/gross の区別あり。
🧊 体積
コンクリート体積など(IfcQuantityVolume)。
🔢 数
建具や什器の個数(IfcQuantityCount)。
⚖️ 重量
鉄骨の重量など(IfcQuantityWeight)。
さらに IFC には、要素種別ごとの標準の数量セットが定義されています。壁なら Qto_WallBaseQuantities(長さ・幅・高さ・側面積・体積など)、スラブなら Qto_SlabBaseQuantities、という具合です(IFC2x3 では「BaseQuantities」と総称)。この標準セットに沿って書き出されていれば、受け側は「どの壁の・どの数量か」を機械的に集計できます。
数量 ≠ 積算
ここが最重要です。モデルから拾えるのはあくまで「数量」(4000mm、9.6m² など)であって、**積算(コスト)**ではありません。積算は数量に単価・歩掛・ロス率・施工手間などを掛けて初めて出るもので、モデルだけでは決まりません。
数量(QTO)
- 壁 120 枚 / 総側面積 1,150 m²
- コンクリート体積 340 m³
- ドア 45 / 窓 62
- 要素に根拠が紐づく
積算(コスト)
- 単価・歩掛・ロス率
- 施工手間・仮設・経費
- 地域・時期・数量スケール
- 拾い基準(控除ルール)の判断
つまり QTO は積算の強力な入力です。数量を正確・高速に用意できるほど、積算の精度と速さは上がります。ただし「モデルの数量をそのまま金額にする」わけではない、という前提を共有しておくと事故が減ります。
よくある落とし穴
- net と gross の取り違え: 開口(窓・ドア)を控除した純数量か、控除前の粗数量か。用途に合わせて選び、送受で揃える。
- 数量が書き出されていない: そもそも IFC に数量が含まれていないと拾えない。書き出し設定で数量(BaseQuantities)を含める必要がある(IFC エクスポートのコツ参照)。
- 単位の不一致: 面積・体積は単位の食い違いで桁が飛ぶ。妥当性(壁高 ≈ 2.7m 等)で検算する(IFC のよくあるエラーと対処)。
- モデリング精度への依存: 数量はモデルの作り方に忠実。ざっくり作ったモデルの数量もざっくり。数量の信頼度はLODと結びつく。
- ベンダー独自の数量: 標準の
Qto_*以外に独自数量が混ざると、集計時にどれを使うか迷う。標準を優先する。
実務での確認と使い方
まずビューアや属性表示で、要素をクリックして数量が入っているかを確認します。標準の数量セット(Qto_WallBaseQuantities など)が見えれば、集計に使える状態です。数量が空なら、書き出し側で含めてもらうところから。
集計の際は、拾い基準(net/gross・控除ルール)を先に決めて統一するのが肝心です。基準がぶれると、同じモデルから違う数量が出て突き合わせられません。分類(プロパティセットと分類)で要素を種別・部位ごとに束ねておくと、集計の粒度をそろえやすくなります。
まとめ
- QTO はモデルから数量を拾うこと。IFC は要素ごとに長さ・面積・体積・数・重量を持てる(標準の BaseQuantities)。
- モデルの数量は積算の入力であって、単価・歩掛を含む積算そのものではない。
- つまずきの定番は net/gross・開口控除・単位・書き出し漏れ。拾い基準を先に統一する。
- 数量の信頼度は**モデルの作り込み(LOD)**に比例する。
数量拾いは、BIM の「変更に追従する」強みが最も分かりやすく効く領域です。数量が要素に紐づく前提を活かせば、拾いの手間と取りこぼしを大きく減らせます。属性・分類の基礎はプロパティセットと分類、全体像はIFC とはにまとめています。