「このモデル、LOD いくつで作る?」——BIM の打ち合わせでよく出る質問ですが、LOD の意味は意外とあいまいに使われています。形の細かさのこと? 情報の量のこと? この記事で LOD を整理します。
- LOD は、モデル要素の 作り込みの度合いを示す指標
- 「Detail(形の細かさ)」と「Development(情報の信頼度)」の2つの意味がある
- LOD100〜400 は「設計がどこまで固まったか」の段階。LOD500 は 400 の上ではなく「実物を測って作った」ことを表す別物
- 「全部を高 LOD に」は誤り。必要なところを必要なだけが原則
LOD の2つの意味
LOD という略語には、しばしば2つの異なる意味が込められます。ここを区別すると一気に分かりやすくなります。
形の細かさ
- ジオメトリがどれだけ詳細か
- 「見た目」の精緻さ
情報としての信頼度
- 形+属性が「どこまで確定し、頼れるか」
- 意思決定に使える情報の成熟度
重要なのは Development(信頼度) の視点です。きれいな 3D(Detail が高い)でも、寸法や属性が仮置きなら、それを根拠に発注はできません。LOD は「見た目の細かさ」だけでなく「その情報をどこまで信じてよいか」を表します。
LOD の段階(100〜500)
ここでは、もっとも広く参照されている米国 BIMForum の LOD Specification 2025 の考え方で説明します(国や規格によって用語や番号の付け方は違います。国際規格の ISO 7817-1 は「LOIN(必要な情報の詳細度)」という別の枠組みで同じ問題を扱っています)。
LOD 100
概念。おおよそのボリューム・位置を示す程度。
LOD 200
概略。おおまかな形状・寸法・属性を持つ。
LOD 300
詳細。確定的な形状・寸法・属性。設計の根拠になる。
LOD 350
取合い。他要素との接続・干渉まで表現。
LOD 400
製作。施工・製作に使えるレベル。
LOD 500
既存・竣工状態。実物の観測・現地確認をもとに作ったもの。精度の明記が必要。
100〜400 は数字が大きいほど「設計として確定している」ことを表し、それだけコストと手間もかかります。下の段の要件を上の段がすべて含む「積み上げ」の関係です。
ただし LOD500 だけは例外です。BIMForum は「LOD500 は LOD400 より高い段階を意味しない。要素の形が、これから作るものの設計ではなく、すでにあるものの観測から決まったことを示す」と定めています。つまり「最上位の LOD」ではなく、「設計モデルか、実測モデルか」という種類の違いです。
フェーズとの対応
実務では、プロジェクトの進行とともに LOD が上がっていくのが一般的で、目安は次のとおりです。ただし BIMForum も「LOD と設計段階に厳密な対応はない」としていて、同じ時点のモデルにも LOD の違う要素が必ず混ざります。どの要素をどの時点でどの LOD にするかは、案件ごとに BEP(BIM 実行計画)で決めます。
LOD 100〜200
ボリュームスタディや概略検討。細部は不要。
LOD 300〜350
確定的な寸法・属性、取合いの整合。
LOD 400
製作・施工に耐える詳細。
LOD 500
実測・現地確認で作り直した要素。設計モデルの延長ではない。
よくある誤解
「LOD は高いほど良い」——誤りです。 高 LOD は手間とコストを伴います。基本設計の段階で全要素を LOD400 にするのは無駄が大きい。目的に対して必要なところを必要なだけ上げるのが正解です。
「LOD = 形の細かさだけ」——不十分です。 形が詳細でも属性が空なら、情報としての信頼度(Development)は低いまま。BIM の本質は情報であることを思い出しましょう。
まとめ
- LOD はモデル要素の作り込み度合いを示す指標。
- 「Detail(形の細かさ)」と「Development(情報の信頼度)」の2つの意味がある。
- LOD100〜400 は設計の確定度の段階。LOD500 は「実物の観測から作った」ことを示す別種で、400 の上ではない。
- 段階と LOD は厳密には対応しない。要素ごと・目的ごとに BEP で決める。
- 全部を高 LOD にするのではなく、目的に応じて必要な分だけが原則。
LOD を「見た目」ではなく「どこまで信じてよい情報か」で捉えると、過剰なモデリングを避けつつ、必要な品質を確保できます。