BIM の要素は、ただの形ではありません。壁なら耐火性能・外部/内部・耐力壁かどうか、ドアなら防火性能・寸法・型番——こうした**情報(属性)を持っています。IFC でこの属性を束ねる仕組みがプロパティセット(Pset)で、要素が「何か」を体系立てて表すのが分類(Classification)**です。この 2 つは、モデルを「見る」から「使う」(検索・集計・検証)へ進める土台になります。
- Pset(プロパティセット)= 要素に付く名前付きの属性グループ(例:
Pset_WallCommonの耐火性能・外部/内部)。 - 標準 Pset(IFC 定義)とカスタム/ベンダー Psetがあり、集計・検証には標準を優先する。
- 分類は要素に「これは何か」の符号(Uniclass・OmniClass 等)を付け、種別横断の集計・照合を可能にする。
プロパティセット(Pset)とは
Pset は、関連する属性をひとまとめにした名前付きのグループです。IFC では要素に複数の Pset を関連付けられ、各 Pset の中に個々のプロパティ(名前と値の組)が入ります。たとえば壁には Pset_WallCommon が付き、その中に「耐火性能」「外部か内部か」「耐力壁か」といった値が並びます。
標準 Pset とカスタム Pset
Pset には大きく 2 種類あります。
標準 Pset(IFC 定義)
Pset_WallCommon/Pset_DoorCommonなど- 名前と意味が仕様で決まっている
- どのツールでも同じ解釈で読める
- 集計・検証・受け渡しの共通言語
カスタム / ベンダー Pset
- ツールや組織が独自に定義
- 内部管理用の属性が大量に付くことも
- 受け側では意味が分からないことがある
- 標準を埋もれさせる原因になりがち
実際のモデルでは、ベンダー独自の内部属性が大量に混ざることがよくあります。数の上では独自属性が大半で、肝心の標準 Pset(耐火性能や数量など)が埋もれて見えづらくなる、という状況です。集計や検証をするなら、標準 Pset を優先して読むのが定石です。
分類(Classification)— 要素に「これは何か」の符号を付ける
Pset が「その要素の値」を表すのに対し、分類は「その要素が何に当たるか」を、共通の符号体系で表します。IFC では IfcClassification(体系)と IfcClassificationReference(個々の符号)で、要素に分類コードを関連付けます。
分類を付けると、種別をまたいだ集計・照合ができます。たとえば「外壁に相当するもの」を、モデルの要素型(壁・カーテンウォール等)に関係なく分類コードで一括して拾う、といった使い方です。QTO やモデルチェックの精度は、分類が整っているほど上がります。
主な分類体系
分類体系はいくつもあり、地域や目的で使い分けられます。代表的なものだけ挙げます(事実関係は各体系の公式定義に従ってください)。
Uniclass
英国発の統一分類。要素・システム・製品などのテーブルに分かれ、幅広い工種をカバー。
OmniClass
北米発。複数のテーブル(要素・成果物・製品など)で構成される包括的な体系。
Uniformat
建物を「部位(エレメント)」で分類。概算・初期段階の集計と相性が良い。
MasterFormat
仕様書(工事の成果)の分類として北米で広く使われる。
どれを使うかはプロジェクトや発注者の要件次第です。大切なのは、プロジェクトで 1 つ(または明確な対応関係)に統一すること。混在すると、せっかくの分類が照合に使えなくなります。
Pset・分類が失われる/散らかる理由
- 書き出しに含めていない: 属性・分類は書き出し設定で含める必要がある。外れていると形状だけの IFC になる。
- ベンダー独自属性の氾濫: 標準 Pset が独自属性に埋もれる。受け側は標準を優先して読む。
- 分類が未設定/不統一: そもそも分類が付いていない、または体系が混在している。プロジェクトで統一しておく。
- 命名のゆらぎ: 手入力の属性は表記ゆれで集計が割れる。標準の Pset・分類に寄せると安定する。
書き出し全般のつまずきはIFC エクスポートのコツ、属性が空になる症状はIFC のよくあるエラーと対処にまとめています。
実務での使い方
まずはビューアで要素をクリックし、どんな Pset・分類が付いているかを確認します。標準 Pset が見え、分類コードが付いていれば、検索・集計・モデルチェックに使える状態です。数量拾い(QTO)も、分類で部位・種別に束ねると粒度をそろえやすくなります。
逆に、属性や分類を「後から一括で足す」のは手間もリスクも大きいので、モデリングの段階で標準 Pset と分類を意識しておくのが、結局いちばん効きます。
まとめ
- Pset は要素に付く名前付きの属性グループ。標準 Pset を優先し、ベンダー独自属性に埋もれさせない。
- 分類 は要素に「これは何か」の符号(Uniclass・OmniClass 等)を付け、種別横断の集計・照合を可能にする。
- 分類体系はプロジェクトで 1 つに統一する(混在は照合を壊す)。
- 属性・分類が整うほど、検索・数量・検証の精度が上がる。
形状だけの BIM は「見る」までですが、属性と分類が整った BIM は「使える」データになります。全体像はIFC とは、用語はBIM・IFC 用語集にまとめています。